寒春の候で映画いくつか

『キューティー&ボクサー』感想。

牛ちゃんと乃り子さん。NYに拠点を置くアーティスト夫婦に密着したドキュメンタリー。悪趣味かもですが夫婦喧嘩を見てるの好きなんですよね〜。腹のうちがチラッと見える瞬間がたまらないです。ドキュメンタリー映画ではあるけれど、オープニングを飾っているのが「三つ編みを整える乃り子さんの姿」であることから、どちらかといえば彼女のほうに比重を置いている映画です。いわば若気のいたりで牛ちゃんと一緒になった乃り子さん。彼女の中には、これまでの後悔とこれからの野望が渦巻いていて、その姿や言葉は人間として非常に“アート”に映ります。「ボクシングペインティング」で、何もない“無”からアートを生み出すのが牛ちゃんで自らの人生を描き出すのが乃り子さんなんですね。ラストシーンだけは演出をつけたそうですが、牛ちゃんにパンチをかます乃り子さん、と映画を象徴した画になっていて良かったと思います。面白かった!


『リベンジ・マッチ』感想。

シルベスター・スタローンロバート・デ・ニーロという文字を目にすると、「あ、ボクは世代じゃないや」と思ってしまうクチなんですが、この映画はめちゃくちゃ良かったです。スポーツものでは高確率で泣くってのもありますが気持ち良く泣かせてもらいました。「再戦」への二人の想いがドラマの進行と共に「自分のため」ではなくなっていく面白さで、そのなかでスタローンの包容力/デニーロの緩急といった“演技”の魅力があって、オカシなことを言うようですが「あぁ〜、この人たちは本当にスターなんだなぁ」と思えました。格好よかった!


アデル、ブルーは熱い色』感想。

主人公アデル(asアデル・エグザルホプロス)の半径1mのカメラワークで半径1mの物語を綴る。はじめのうちは朗読などでその後の展開を暗示するも、アデルに変化が訪れてからはその一切を言葉には頼らない。言葉は攻撃的で相手を傷付けやすいものだから。劇中では食事というか「何かを口にする描写」が多い。アデルの口はいつも半開き。何も喋っていなくても彼女の考えは伝わる。同級生の悪ノリのキスにアデルが何を覚えたか分かってしまい、その「不味さ」に居心地が悪くなる。民度の違いなどから相容れない二人だと分かってから叫ばれるアデルのエマ(asレア・セドゥ)への言葉は悲痛。バーで出会ったときは言葉を用いず分かり合えたのに。指を食べちゃう。言葉で語られては感情の鮮度が落ちる、とでも言いたげな貪欲さを感じる映画でありました。かなり好き。


キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』感想。

キャップ映画第2弾。『アイアンマン3』(2013)と『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』(2013)と合わせて、《『アベンジャーズ』(2012)でNYを舞台に世界を救ったヒーロー達が己の地盤を揺るがされて危機にさらされる3部作》といった感じでした。ファーストバトルのキャップvsGSPが良かったです。「試してみるか?」とかベタですけど燃えます。肉弾戦以外ならウィンターソルジャーの横を車がひっくり返っていくシーンが好きでした。大義は正義ではなく正義は自由ではない、というヒーロー煉獄を描きながら「しかしその矛盾の中を戦い抜く」のがヒーローであると力強く描いてくれた映画。ただ、ポリティカルだとか裏切りだとかはどうもあんまり好きじゃないのと、『1』にあったドサ回りの「盾にメモ書き」ってアイデアが物凄く好きっていうのがあるので『1』のほうが好きです。とはいえ、続編3作でそれぞれが格段にレベルアップした印象。来年のアベンジャーズ、さらにはガーディアンズマーベル・シネマティック・ユニバースの楽しみはまだまだ続きます。おわり