林業、やめるのやめるってよ『WOOD JOB!(ウッジョブ)神去なあなあ日常』

『WOOD JOB!(ウッジョブ)神去なあなあ日常』感想。

矢口史靖監督の映画はぜんぶ好きなんですよね。細部は忘れちゃってますが『ウォーターボーイズ』(2001)や『スウィングガールズ』(2004)という文字面を見ると何だか楽しい気分になるし、『ハッピー フライト』(2008)は手に汗握りながら(`・ω・)bグッ!って感じだし、ロボットの中におじいちゃんっていう仏像つくって何とやらにウルトラCかます『ロボジー』(2012)もイイと思います。そんな普通くらいに矢口監督好きな状態で見たこの映画、もちろん面白かったです!それどころか最高だったです!

進路が決まらぬままぼんやり過ごしていたら彼女だと思っていたコにあっさりフラれ、ペッと吐き捨てたガムに人生懸けてみたりなんかしちゃう主人公・平野勇気(as染谷将太)を演じる染谷くんの相変わらず具合がまず魅力的。彼の物事に取り組むテンションが腑抜けでも頑張り屋さんでもないのが楽しいですね。見てると元気でる。特にイイのが林業を「辞めるのをやめる」ところ。あそこで「初心」を忘れない朗らかさよ。

「辞めるのをやめる」。本来、これはとても勇気のいることとされていると思います。入社したり、入学したり、家庭を持ったり、これから始める「新しい生活」には、難しい岐路に立たされることがあるかもしれませんし、もしそこでダメだったら、もう取り返すことは難しいのかもしれません。「後悔先に立たず」というその言葉こそが目の前に立ちふさがってくるんです。

でも、それは「もし」でしかないし、「かもしれない」でしかありません。人生、いやこの世界には、必ずしも救いやラッキーが残されていないわけではないと思うんです。直紀ちゃん(as長澤まさみ)みたいなコと会う可能性は絶対あるし、ヨキ(as伊藤英明)とみき(as優香)の妊活はきっと報われると思うんです。

100年間の想い。神去村の木々にはそんな想いがありました。そんな「生命力」が舞台に息づいているだけで素晴らしいし、それをTHE・挫折!THE・努力!みたいなガツガツしたものでなく「なあなあ」というテンションでやってくれるのが最高です。監督ならではの“ドラマチック性の排除”に「ンだよ〜父ちゃんが倒れたと思ったじゃんかよ!」の場面があって、そういう「つくり話」はこの世界観に必要ないんですよね。こういった筆さばきが、この世に残っているであろう「幸福」を殊更感じさせてくれて気持ちがイイんです。立ち並ぶ木々!差す日照りに降る雨!川のせせらぎと美味そうな握り飯!そして、真っ昼間からのばあ様方の青空麻雀!とどめの一発に奇祭の大スペクタクル!日本よ、これが映画だ!

ウッジョブ。林業を題材にした単なる言葉遊びにあらず。この世界の素晴らしさ、それでいて現代批判ではないバランス感覚、生きる愉しさと喜びを色彩豊か色欲多め香りキツめに提供してくれた矢口史靖監督を始めとする全ての関係者さんたちへ、ウッジョブ(`・ω・)bグッ!傑作でした!おわり