しおれる花『ブルージャスミン』

ブルージャスミン』感想。
主人公ジャスミン(asケイト・ブランシェット)は一度味わってしまった生活水準を下げることができない人物。セレブな生活、ブランド用品、飛行機はファーストクラスだけ。詳しくはわからないしわかりたくもないけれど、とにかく彼女の日常にはゼロが多くついてまわります。

そんな彼女をアラララやっちまいましたなーと指差して笑えるように仕立てあげられてはいますが、ボクは見ているうちにだんだんとそういうテンションでは見れなくなりました。例えば、自動車を日常的に使っている人が明日から自転車に切り替えることは難しいだろうし、風呂をテルマエ式に変えるのは無理です。レンジャースのダルビッシュ投手のように犠牲を払ってストイックになれる人間なんてほんの一握りです。

もちろん、自尊心を周囲に吐き散らかすジャスミンの態度は褒められたモンじゃありませんが、どちらかといえばボクは妹ジンジャー(asサリー・ホーキンス)に共感できません。同じ花のタイトルを冠した映画『ウォールフラワー』(2012)にあった印象的なセリフ「自分に見合うと思うからその相手を選ぶ」ではないけれど、ジンジャーはとにかく場当たり的に見えるのです。怒っているアナタは嫌いだけど優しいアナタは好き。まるで応急処置のように“幸せ”を選ぶのもどうなのか?と。

バカにつけるクスリはないと言うけれど、断固としてそれを認めないジャスミンの“ブレない姿勢”は彼女に残された最後の意地です。確かに、自分が招いた過去のしっぺ返しで彼女は身を滅ぼしたかもしれないけれど、私はこうあるべき!それ以外は認めない!という最後の一線を頑なに守ったことで彼女は彼女のままでいられた。夢も愛もお金も家族も全て失ったけれど、ジャスミンであることを最後の最期まで貫き通しました。

ジャスミンの元の名前ジャネット=Jeanettには「神の慈悲深さ」といった意味があるそうな。日本語でいうなら優子とか仁美みたいなイメージなのかな?それはともかくとしても、ジャネットであることをやめた彼女に神が慈悲を与えないならば、ジャスミンでいることをやめなかった彼女のことを想い今宵も一杯やりますよ。ボクはダルビッシュにはなれないから。ハイ。面白かったです!遅くなったけどオスカーおめでとう!おわり