漢の戦い『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』

進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』感想。

実写映画版を見たあとに原作漫画を全巻読んだ。そりゃ100分弱と単行本16冊じゃ情報の錯綜っぷりが違うけど、実写版のほうがキャラクターに感情移入できるしスッキリしてて好きだ。原作漫画は、巻末の嘘予告コーナーが面白いから最後まで読んではみたけれど、キャラクターの描写があくまで個人的な「殺人の覚悟」に終始したり、そもそも主人公エレン含め真面目なだけで意外性に乏しかったり、盛り上がりとしても女型の巨人がピークで、王家がどうした記憶改竄がどうしたの辺りからは後出しジャンケンの応酬に過ぎなかったりで、もう読み進めるというより「読まされる」感じに辟易とさせられてしまい、次第に興味が薄れていく、といったある意味王道の少年漫画だと思った。



原作漫画とは違うエレンの設定変更というドーピングがされることによって、映画版は完全に「漢の戦い」の様相を呈するものになった。「自分の守りたいものについて納得のいかないことがある」という単純明快な行動原理が配されていて、それは男でも女でもなく漢なのだ。そこに制作陣の日本映画に対する心意気が見て取れるのは言わずもがで、それは嫌いになれないよね。それと、原作漫画では消臭されている性描写が映画版では「死への恐怖」からくる錯乱として描かれていて、男を誘惑する女と女を押し倒す男と均等に配することで、個人的なキャラクター描写ではなく、「世界は残酷」の臨場感を増すものとして画面に登場しているのが上手い。

そんなこんな色々あるけど、実写版の魅力は日本映画のお家芸がそこかしこに感じられるところで、そのひとつは「巨人の気持ち悪さ」で、体型や表情がやけにリアルな巨人たちの薄ら笑いや佇まいにはJホラーの亜流を感じさせてくれる。もうひとつは「バトルロワイヤル感」で、派遣される調査兵団のほとんどが「心臓を捧げよ!」なんて本気で思ってはいなくて、でも色々な理由で行かなきゃならなくてっていう若者の圧力鍋調理が楽しい。美味いもんは何度食っても美味いもんだ。

壁の向こうの世界に見ていたエレンの希望は絶望に変わり、まだ見ぬ海に見たアルミンの羨望は抑圧に変えられてしまう。壁に連れていかれるときに「え?今じゃなくていいよ?」と言ったミカサは3人の世界でじゅうぶん幸せを感じていたが未曾有の恐怖を味わい、力でそれを服従させることしかできなくなった。実写版はこの3人の関係性に焦点が充てられていてシンプルに楽しい。あとはハンジ役の石原さとみが最高だった。いつまでも見ていたいキャラクター2015年度ナンバーワンです。




本編感想はもう書くことがないので最後にネットで見かける場外乱闘のことを。facebookの友達限定公開で書いた暴言がネットに晒されるってそんな幼稚な出来事が起きるのか!何だか第104期訓練兵の中から巨人探しをすることと被って壮大な自演かと思ってしまうよ。あと、出禁を掻い潜ってまで試写に駆け付けダメダメの評価を下すということを本当にしたのなら、前田有一という男は相当にネチネチしていて打算的な仕事人間なんだね。良いと思う。もう続報は無いだろうけど、漫画の記憶改竄能力は確かにこういうとき平和に機能するだろうなって思った。ハイ、映画は普通に楽しかったので、来月の後編公開を楽しみにします。