大切なことはすべて盗んで学んだ『ナイトクローラー』

ナイトクローラー』感想。

「開いてたから入った」を言い訳にすることが多い主人公ルイス。彼には自分が悪いことをしている非難されるようなことをしているっていう自覚がありません。え?だって、あのとき社長が言ったんだよ。こそ泥は雇わないって。そう、僕はこそ泥なんだ。こそ泥がこそ泥らしく盗みを働いて何がいけないの?え、パパラッチをして何を盗んでるのかって?違うよ。「パパラッチ」を盗んだのさ。燃えている車を映すカメラを一目見て思ったよ。僕にも出来そうだってね。僕は覚えが早いからさ。−−−−−とでも言いたげな感じです。はじめの腕時計ずっとしてるし。

そう思ったら、雇ってくれないか?っていうあのやり取りがルイスにとってはターニングポイントで、こそ泥は雇わないの一言を聞いたあとの薄ら笑いの裏に吹っ切れてしまうところがあったのかなと思います。

それからはもうあれよあれよと下衆のオンパレード。 姑息で、ずる賢くて、ちょっとマザコンっぽいところにも納得がいって、犯罪現場を自分で演出し始めるなんて想像もしてなかったから本当に驚いたっていうかちょっと感心しちゃいました。どんどんと悪さをするのが上手くなっていって、仕事上のスキルアップに過ぎないといった具合で彼の成長工程が描かれます。

家にいるときは植物に水をやるか昔の番組を垂れ流すかしかしてなくて、あとはパソコンでもっともらしい知恵を身に付けるお勉強。その街に自分がいる意味は街が与えてくれて、自分の言葉に自信を持たせてくれるのはインターネットソース。今、この時代の空気感がうまく表現された映画だなと思いました。かといって、別に現代社会批判だとか闇をえぐったとか、そういう映画ではなくて、いろんな側面はあれど、とにかく彼はこの世に存在しうるのだから。存在を映すのが映画だろう?といったところ。「彼がいるから撮った」。ハイ。面白かったです!