クラクラ少女『アベックパンチ』

古澤健監督最新作。男女が手をつないでいることがルールの架空格闘技「スポーツアベック」。しょーもない毎日を送っていた男二人がこの「アベック」と出会い、擦り傷や切り傷が痛くてたまらないのだけど、その痛みも一緒に笑顔になってしまう、みたいな青春の二文字がこれでもかと飛び込んでくる爽やかな一品でありました。

相手アベックの手を引き離すことが勝利条件というものすごく変わったルールの格闘技なので、これは何かあるな?という思いで見ていました。原作は未読です。主人公はイサキ(as牧田哲也)とその友人ヒラマサ(鈴乃助)。前半部分はヒラマサが物語を牽引していたと思う。イサキはとにかく彼に振り回されっぱなしなのだ。二人の姿を見ていると、最近では『ヒーローショー』に代表する「空虚な毎日を送る現代人」という印象を受けるのだけど、もしかしたら、彼らのようなキャラクターは映画のなかで最もリアリティーを獲得しやすい存在なのかもしれない。

そんな彼らが「スポーツアベック」に挑戦することで物語が加速していくが、一方で彼らとペアを組む女性陣は「バレエ」「空手」という人より頭ひとつは抜きん出た才能を持っている。その女性陣が、架空のものとはいえ「格闘技」を行なう、というのはもちろん現実における女性ファイターの活躍はそこそこ知っているが、そのキャッチーさからとても「漫画的」だな、と思った。

映画側の男性陣と漫画側の女性陣。このペアが起こす化学反応とは如何に・・・!?というのが、鑑賞中のボクの頭を巡っていた事柄だったのですが、ちょっとその筋での魅力は掴み損ねました。あ、違ってたな・・・などと勝手にションボリしていたら、そんな雑念を吹っ飛ばす彼ら彼女らのキラキラと輝く笑顔が飛び込んできたので、例えるならば「カラオケで歌う曲に迷っていたらば隣の部屋から知ってる歌が聞こえてきて歌いたくなった」というカンジの思いでありました。メバルちゃん(as水崎綾女)のおっとりエロスな風貌と時折見せる鋭い視線にクラクラきたり、押しも押されぬ邦画界の箱入り娘・リナティこと武田梨奈演ずるエツちゃんの親しみやすいツンデレ演技に失神寸前これまたクラクラきたりして、とても楽しい作品でありました。二人と手を繋いだら絶対離さない!洗わない!