マーダー・アイスランド・ショー『レイキャビク・ホエール・ウォッチング・マサカー』

キチガイ捕鯨一家がホエールウォッチングに訪れた観光客を襲うアイスランド初のスプラッタームービー。物語のスキや編集の荒削り感はたくさんあるんですが、なんだか「あのさ、ホラー映画ってこういうカンジだよね?うん、えと、ど、どうかな??」みたいな初々しさを感じてヘンに楽しむことができました。以下、ツッコミなどしながら映画を振り返る。

まず、主人公が誰だったのかよくわかりません。登場人物がホラーにありがちな差別主義者と自己チューばかりで結成されているというのはイイんですが、誰かひとり中心人物みたいのはいないとねぇ。そのへん抜けてます。最後までヒドイ目に遭うのが主人公かな、とも思いますが、経歴を語ったりするのが別の人なのでよくわからない。しかも、肝心のキチガイ一家のコトにもあまり触れない。なんじゃこりゃあ?ってなりますねコレは。でも、よいのです。そこにあるアイデア先行で先走っちゃった感がとても微笑ましいのです。言うなれば仏つくって魂入れずの逆バージョン。調味料はやる気と根気のみ、です。

そのカンジがよくでているなーと思ったのが、キチガイ一家の男たち。観光客みんなにハローハローと挨拶をして止まらなかったり、「ねえ、アイツは悪いヤツかな?悪いヤツかな?」と殺してもいいのかどうか可愛らしく聞いてみたり、遊びじゃないぞと鼓舞しておきながら散弾銃を至近距離で外したり同じ手口に引っ掛かったり・・・。どうもこのキチガイ一家には「殺人鬼見習い」という初心者マーク感があってとっても可笑しい!襲われる観光客も対処の仕方や襲われて皆で助け合ってからの心情の変化が、なーんか「はい!筋書き通りにやってます!」という雰囲気でこれまた可笑しい。見ていて想像したのが、何も知らない生徒たち全員から「センセー!ここはどうすればいいんですか!?」と一気に質問をされて、困ったセンセーが「それはな!多分こうだよ!」と精一杯のアドバイスをし続けた結果、おバカと大真面目の間にある珍妙な味わいがでてきた!みたいな。うん、まぁ、とにかく可笑しいんだよ!

ラストで示される妙なオリエンタル感はどういう理屈で儲けて一人勝ちできるのかホントによくわかりませんが、何やら続編にもその方だけ登板決定だそうで、うーん、ますます意味がわかりません(笑)。もしかして、ホエールウォッチングにくるのはバカか高慢な奴らだけだよ!という劇中のセリフが稀に見る超高角度な皮肉で、つまり、ホラー映画はこういうもんでしょ?的なつくりをされていた本作を前フリにして、スクリーンのなかで罪無き人々が惨殺される様子を楽しんでいるボクのような観客をあざ笑うトンデモ展開を描く、といった世にも珍しいスプラッターを世に生み出してくれるかもしれない!とか思ったりして。嘘です。思ってません。そもそも何を言ってるんだかよくわかってません。はい。おわる。