ある子供のまなざしと祈り『ロゼッタ』

ダルデンヌ兄弟監督作品('99)。『息子のまなざし』『ある子供』『ロルナの祈り』は見ていたのですが本作はながらく未見でありました。ちなみにデビュー作『イゴールの約束』も未見。いつか見る機会があればなと思っています。さて、この『ロゼッタ』、もうね、すんごい好きですねこれは!

オープニングシーン、荒々しいカメラワークと共に主人公ロゼッタの背中が映されます。ああ、ダルデンヌ兄弟の映画だなぁーなんて思って見ていると、彼女は勤めていた工場から突然クビを宣告されてしまう。冒頭の荒々しいカメラは、その宣告に納得のいかない彼女の憤りと呼応していたんですね。ものすごく単純な表現ですけど、単純だからこそハッキリと伝わるし、この冒頭でボクはもうコレは傑作だと安心してしまいましたね。

そこから映画は、彼女がひとえに思う「まっとうな生活を送りたい」との願いの行方を見守ることとなります。アルコール中毒の母とトレーラー暮らしを強いられながら、どうにかまっとうな生活を手に入れようと仕事さがしをする彼女。そのなかでリケという男性と出会い、どうやらロゼッタに好意を抱いているらしいリケとロゼッタのお金は無いけど楽しいねみたいなやり取りが、見守るボクにもとても微笑ましく映ります。ここで見せるロゼッタの笑顔にはやられましたね。

しかし、あることをキッカケに仲違いしてしまう二人。リケはエンジン音をかき鳴らしながらバイクを走らせてロゼッタを執拗に追い回します。自分の周りをバイクで回られても、しょうがないじゃない!あたしには何もないの!ああするしかなかったの!あんたも諦めてどっか他に行ってよ!とでも言いたげにリケから視線を逸らすロゼッタ。もうこの辺りでは一体どうやったら彼女に救いが訪れるのかとほとんど絶句していましたが、ラストシーン、ついに心が折れた彼女に向かって差し伸べる手。それをまるで生まれ初めて見るモノを見たかのような表情で見つめるロゼッタ。なんとなくボクには冒頭の荒々しいカメラワークとリケのバイクによる追跡とが重なって見えて、それまで彼女への救いを願っていた自分の思いを映画が汲んでくれたようなシーンに見えてハッとさせられました。うん。とても良かった。これから何度も見ていきたい素晴らしい作品でありました。