同日公開2本立て『アジョシ』と『世界侵略:ロサンゼルス決戦』


『アジョシ』
昨年の韓国ナンバーワン大ヒット作品ということで、少し前に日本で大ヒットした『おくりびと』と同じく、うまく料理しきってるとは言えないけどまぁ面白かった、という印象です。ウォンビン演ずる主人公テシクにはジェイソン・ボーンのような匿名の危険性を持たせ、そこに『レオン』に似た少女との関係性をグッとイノセントにした物語を描くという、『96時間』の赤の他人バージョンみたいなお話。「アジョシ」は韓国語で「おじさん」という意味だそうで、家庭環境に恵まれなかった不幸な少女ソミが「アジョシ〜アジョシ〜」とウォンビンへ擦り寄っていく姿がたいへん愛くるしいです。ただ、そんな彼女に最大の敵となる暗殺者までもほだされてしまうのには拍子抜け。目玉をどうしたの場面があまりに先が読めすぎるため、ラストバトルへの緊張感が大いに削がれてしまいました。主人公/悪党/警察たちの三者三様の絡みがどうもしっくりこないなかで、このテのアクションシーンを近年何度も見ているせいか、特段に素晴らしいものだったとは思えず、また、前半の凡庸なシーンの多さで間延びしているあたり『悪魔を見た』とも似ていましたが、同様に貴公子好きの腐向け同人誌っぽい面白さもあってそのおかげでまずまず楽しむことはできました。足を伸ばして茶碗落とすとか目玉をストラ〜イクとかノリがアイドル映画過ぎるのも雰囲気にそぐわないからダメ。




『世界侵略:ロサンゼルス決戦』
仮想敵をつくってアイデンティティーを確立するなんてことは言葉をむつかしくしただけで大なり小なり誰でもやっていることだと思いますが、こと戦争となるとそれはそれはバカげていてもう片足突っ込んだだけでも取り返しのつかないことになりかねないわけで、この映画はそんなシチュエーションのリアルさを文字通り且つ強烈に「シミュレーション」してくれています。まず、気になったのは、宇宙人たちが何度か兵士たちの足を引っ張って連れ去ろうとしていたこと。スピルバーグ神の大傑作『宇宙戦争』でも宇宙人たちは人類を捕獲することから侵略を始めていましたが、あれと同じようにまず人類がどういう生き物なのか?と宇宙人が探りをいれようとしているのかな?と思っていたら、逆に兵士たちが宇宙人を捕獲して、「効率よく殺すために急所を探る」との目的で宇宙人をなんと解剖するシーンがくるので驚きました。この展開はよかった。劇中で何度も叫ばれる「NO!RETREAT!(NO退却)」という言葉が人類最初の世界大戦での言葉だということに何か皮肉めいた意味でもあるんですかねぇ。ま、無くてもいいけど。とにかく、戦争体感モノとして大迫力の映像スペクタクルでありました。スクリーンで体感できればボクの戦意は満足するのです。