嘘が真になる二本『ランゴ』と『ミッション:8ミニッツ』


『ランゴ』

パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズを撮り終えたゴア・ヴァービンスキー監督が、自由奔放につくりあげた娯楽アニメ。とっても楽しかったです。面白かったというよりは、まず楽しいということを伝えたくなる作品でした。小さなガラスケースの中で一人何役もの「なりきり」をして過ごしているカメレオンが、外の世界に出たときにその世界に「溶け込む」のではなく、「なりきり」という自分のカラーで居場所を見つけ出していく王道エンターテインメント。カメレオンをカメレオン俳優のジョニー・デップに演じさせるという贅沢な配役です。映画は、どこかに連れて行けと言ってきかない子どもたちに自分が子どもの頃に慣れ親しんだ西部劇のお話をしてお口チャックしてもらう、といったカンジで、お空に何かが飛んでいたら「ワルキューレの騎行」がイチバンなのだ!という好き好きパワーも伝わってきてとにかく楽しかったですね。うんうん。



『ミッション:8ミニッツ』

ダンカン・ジョーンズ監督作品。これは評判に違わぬ面白さでありました。あの装置でいいなと思うのは、ただ、死の8分前に戻るのではなく「誰かになる」というところだと思います。この装置がボクには映画そのもののように感じましたね。まぁ、ボクはすぐこういうことを言いたがるんですけども、あの装置って映画の登場人物に「感情移入する」という事と同じようなことでね、とても素敵だと思いましたよ。物語的には近年では『ハート・ロッカー』を筆頭とする「取り返しのつかない事をひとつずつ取り除いていく」もので、科学的根拠なんていう無粋なことをやらないのも正解で、劇中の列車よろしく目的地一直線に物語ってくれるダンカン・ジョーンズ監督はほんとうに信頼できますね。あと、ラストなんですけども、ボクは好きでした。このラストで世界はふたつになったカンジだけれど、一本の映画をひとつの次元だと思えば、これに限らずいくつもの世界があるのかもしれないよ、という可能性が感じられてイイと思いましたね。おわり。